臨床の中で、何度も感じてきました。
「もっと早く知っていれば、変えられたかもしれない」
「もっと多くの人に届けられていれば、守れたかもしれない」
私は歯科衛生士として、子どもから高齢者まで、さまざまな方のお口と向き合ってきました。
むし歯や歯周病を予防し、歯を守ること。
それは、歯科衛生士としてずっと大切にしてきたことです。
けれど臨床を続ける中で、次第に考えるようになりました。
「歯だけを見ていて、本当に歯を守れるのだろうか」
歯があっても、歯だけで噛むことはできません。
舌、口唇、頬、顎。
それぞれを動かす筋肉が働き、互いに協調することで、私たちは食べ、飲み込み、話すことができます。
そして、どれだけきれいな歯があっても、その使い方によっては歯に負担がかかり、壊れてしまうこともあります。
歯ぎしりや食いしばり、いびき、口臭、知覚過敏。
口が開いている、うまく噛めない、飲み込みにくい、発音しづらい。
一見すると別々に見える症状や悩みも、 「その人が、口をどう使っているのか」という視点から見ることで、新たな気づきにつながることがあります。
だから私は、歯そのものだけではなく、
その歯をどう使っているのか。
なぜ、今の状態になっているのか。
そこまで見ることを大切にするようになりました。
形だけではなく、機能を見る。
私が臨床の中で大切にしてきた考え方があります。
形態を変えても、機能は変わらない。
機能を変えれば、形態は変わる。
形態を整えることは、とても大切です。
しかし、その背景にある呼吸や舌の位置、飲み込み方、噛み方などの機能が変わらなければ、
本質的な問題が残ることがあります。
だからこそ、トレーニングをただ行うのではなく、
見る。
評価する。
原因を考える。
その人に必要な順番を考える。
そして、一人ひとりに必要な機能を育て、整えていく。
この臨床で積み重ねてきた考え方から生まれたのが、スマイルMFT®です。
口腔機能は、一生を支えるもの。
呼吸する。
食べる。
飲み込む。
話す。
笑う。
口腔機能は、子どもの歯並びのためだけのものではありません。
子どもにとっては、これから獲得し、育てていく機能。
大人にとっては、日々使い続ける機能。
そして高齢になれば、その人らしく食べ、話し、暮らしていくために守り続けたい機能です。
口腔機能は、人生のある一時期だけではなく、一生を支えるもの。
だからこそ、その大切さをもっと多くの人に知ってほしいと考えています。
口腔機能を、一部の専門家だけの知識にしない。
スマイルMFT®を伝えていく中で、もう一つ強く感じるようになったことがあります。
口腔機能は、歯科医院の中だけで完結するものではないということです。
医療から、教育へ。
子育てへ。
介護へ。
地域へ。
もっと早く知ることができれば、変えられることがあるかもしれない。
日常の中で気づく人が増えれば、守れるものがあるかもしれない。
そのためには、私一人が伝え続けるだけでは足りません。
学ぶ人が増え、実践する人が増え、そして次の人へ伝える人が育っていく。
その学びと実践を、人から人へつないでいくために、一般社団法人スマイルMFTを設立しました。
認証することがゴールではありません。
認証後も学び続け、実践を重ね、その中から次の人へ伝える指導者が育っていく。
そのつながりを通して、口腔機能に関する正しい知識と実践を社会へ広げていきたいと考えています。
口から、未来を動かす。
私たちが目指しているのは、口腔機能の知識を広めることだけではありません。
一人ひとりが、自分の口の機能を知ること。
必要な機能を育て、整え、生涯にわたって守っていくこと。
そして、それを支えられる人が社会の中に増えていくこと。
その積み重ねが、子どもの健やかな成長につながり、大人の健康を支え、 高齢になっても食べ、話し、笑える人生につながっていくと考えています。
口から、人を支える。
口から、人生を支える。
そして、その先の未来へ。